ふじもと歯科診療室

東京都稲城市東長沼3103-12
Tel/Fax: 042-378-7105

むし歯治療

むし歯治療の目的

 

患者さんに、「何のためにむし歯を治すとお考えですか?」と訊いてみることがあります。 たいていは、「痛くならないようにするため」、「噛めるようにするため」などといった答えが返ってきます。

 

異論もあるでしょうが、私は「歯を長持ちさせるため」と考えています。

 

痛くならないようにする確実な方法は、抜歯です。しかし、抜歯してしまいますと、当然ながら「噛む」ことに支障をきたします。 また、良く噛めるのは、自分の歯ですが、それも健康な状態が継続されなければ、良く噛めるとは言い難いのではないでしょうか。

 

ところで、どうやったら歯が長持ちするのかを考えると、いろいろとやることがあるように思えますが、要は、抜かなければならない状態にならなければ良いわけです。

 

私の経験からいうと、抜歯には、おおむね五つのパターンがあると思います。

  1. 交換期に、永久歯に影響がでそうな乳歯。
  2. 親知らず、過剰歯や、転位歯と呼ばれる、歯列からはずれてしまった歯。
  3. 外傷により、折れたり、割れてしまった歯。
  4. むし歯でボロボロの歯(根の治療をしても治癒が期待できない歯も含む)。
  5. 歯周病でグラグラになった歯。

こうして考えると、いわゆる綺麗な永久歯の歯並びで(親知らずもきれいに生えている)、抜歯に至るのは、むし歯でボロボロにするか、歯周病でグラグラにならない限りなさそうです。

 

そして、抜歯と診断されるむし歯の神経(歯髄)が生きていることは、まずありません。 つまり、歯の神経が健康で、歯周病にならなければ、抜歯は避けられそうです。 ですから、むし歯治療は、「歯の神経を守るため」にするべきと考えています。 そのため、治療時には、できるだけ神経を刺激しないように、ダメージを与えないようにすることに気を遣います。

 

むし歯治療時のお願い

 

さて、むし歯治療の時、私がどういうことに気を遣うかをお話したいと思います。 まず、当診療室では、原則的に、麻酔をしません。 治療に入る前に、「麻酔は原則的にしないんですけど・・・」とお話すると、 「えっ?!」と、驚かれることが多いです。

 

実は歯を削る時、どこを削っても痛いわけではありません。痛いところと痛くないところがあります。 私は、“痛い”ということは、体が「そんなことしないで!」という信号をだしていると思っています。ですから、痛いところは、痛くないようにそーっと削る必要があります。逆に痛くないところは、そのまま続けても問題ないと考えます。 最初から麻酔をしてしまいますと、どこが痛い所なのかわからなくなってしまいます。麻酔は、あくまでも歯の神経が感じるものを脳に伝達するのを妨げるだけですから、麻酔をすることが、神経に加わる刺激を和らげるわけではありません。 痛いところを触る場合、タービン(歯を削る道具)の注水量、回転数、バー(削るドリルのようなもの)を変えて対処しています。 ただ、絶対に麻酔しないわけではありませんので、ご安心を。一歩まちがえれば、拷問ですから。

 

また、一度鎮静効果のあるセメントを詰めてからしばらく時間をおいて処置することもあります。歯の神経が、充血等をおこしていることが疑われる場合、そこに削る刺激が加わることは、望ましくないからです。 実際、詰め物がとれてしみるという訴えがある歯に、セメントを詰めて一週間もすると、水をじゃんじゃんかけながら削ってもしみないといったこともあります。

 

ただ、いずれにしても、治療は若干痛みを伴いますし、通院回数も増えてしまいます。 なるべく患者さんの負担を減らす努力はしておりますが、患者さんのご理解のもとでなければ、このような方法はとれません。

 

そして、歯の神経を傷つけず、悪い部分を除去できたら、むし歯治療の大部分は終了です。 しかし、知っておいていただきたいのですが、この悪い部分を除去するということが、実はとっても難しいのです。

 

健康な歯質と、感染歯質は、くっきりと区別がつきませんし、どこまで除去すればよいかは議論の素にもなる問題です。 きちんと除去できたかどうかの判定は、色、硬さ、染め出し剤の使用、レーザーによる診査など様々な方法があります。 しかし、100%完璧ということは、なかなか難しいところです。 患者さんに、そうお話すると、またも皆さん「えっ?!」となります。 もちろん、こちらは100%を目指してはおりますが、残念ながら医療の分野で100%ということは、ありえない気がします。

 

こういったことを考えていくと、当たり前ですが、むし歯を作らないことが、一番ということになります。

 

さらに確実さを求めるために

 

むし歯治療の最終段階、詰めるまたは被せるといったことが終了すると、皆さんやれやれやっと終わったかという感じでしょう。 しかし、当診療室は、そこからさらにもう一回通院をお願いすることが多いです。

 

それには、二つ理由があります。

 

まず、詰めたり、被せたりした人工物が、本当にキチンとあっているかどうかの確認が必要と考えるからです。実際に、食事していただくと、噛み癖などで当初のこちらの思惑通りのかみ合わせでないことが判明することもあります。また、処置直後は、しみたり違和感がでることがありますが、こういった症状が和らぐ傾向にあるのかどうかも重要です。

 

次に、手入れがなされているかどうかの確認。

むし歯治療は、あくまで結果を修復しただけで、むし歯の原因を除去したわけではありません。みなさん「治った」という表現をなさいますが、私の感覚としては「繕った」という感じがあり、むしろ治療以前よりも念入りなケアが必要と考えております。 また、そのケアがしやすい状態かどうかも確認する必要があります。

 

いずれにしても、詰めたら(被せたら)はい終わり、では、健康状態の維持は難しいのではないかと考えております。

 

乳歯と永久歯のむし歯治療の違い

 

私は、乳歯のむし歯治療と、永久歯のむし歯治療は、目的が異なるものだと考えております。 永久歯のむし歯治療は、歯を長持ちさせるため。 乳歯のむし歯治療は、永久歯をむし歯にしない、健康な永久歯列を構築するためにおこなうというのが、私の考えです。

 

ですから、あえてむし歯の悪いところを残して詰めることもあります(もちろん、それなりのお薬をえらびますが)。痛みや腫れが出ない限り、なるべく歯質を残し、神経を刺激しないようにします。ただし、経過観察がとても必要とされますし、詰め物の交換も頻繁になる場合もあります。 また、永久歯が生えてくる前に、お口の環境がむし歯になりにくい状態になるよう整えてあげることを同時並行して行う必要があります。 ですから、当診療室では、通院が長期にわたることが、めずらしくありません。 しかし、まじめに通っていただいた方は、初診時に、むし歯だらけだったのに、中学生くらいになった時にはむし歯ゼロとなる場合が多いです。

 

そもそも、乳歯でむし歯ができてしまったら、お口の環境が、むし歯ができやすい状態であると疑ってかかって治療だけでなく、予防に取り組むべきと、考えております。 唾液検査などは、その判定に、非常に有効な手段です。 キチンと磨いているのに、むし歯ができちゃうといった方には、特にお勧めです(本当は、全員の方に受けていただきたいのですが)。

 

子どものむし歯治療時のお願い

 

小さなお子さんの歯科治療の際、親御さんの同室を認めるかどうかは、意見の分かれるところだと思います。 子どもさんにしてみれば、親御さんが身近にいるということは、不安の解消に大きいでしょうし、反対に親御さんとしても、何をされているのか確認できるということは、安心に繋がると思います。

しかしうちでは、原則、お子さん一人での治療を、お願いしています。 初めての場合は、数回同席してもらうこともありますが、慣れてきたら、極力一人をお願いしています。

うちでは、歯科を受診するということを通じて、お子さんの自立をも目標にした歯科治療を行っていきたいと、考えています(なお、3歳未満は、これにあてはまりませんが)。 「一人で治療ができた」と、いう自信は、お子さんが成長していく上で必ず財産になりますし、うちではただ治療をするということだけではなく、お子さんの「心の成長」にも一役買えるのではないかと考えています。 ちなみに、ちょっと厳しい言い方になるかもしれませんが、通常歯科治療で親御さんが一緒にいなくてはできないようなものは、ひとつもありません。

最終的には、自分の健康は自分で守る、いわゆる自己責任が大切です。 そのためには、本人の自立が欠かせません。

 

神経(歯髄)を取る

 

むし歯がひどくなると、いわゆる「神経を取る」という処置が行われます。 私が、「神経を取る」という言葉を初めて聞いたのは、小学校3年生のとき、同級生からでした。 ものすごく驚いたので、今でもハッキリ覚えています。 「神経取っちゃったら、どうなっちゃうんだろう?」と、子ども心に、すごく疑問に思いました。ましてや、その同級生が、痛いのが治ってスッキリしたと言っていたので、魔法のように感じたものです。

 

神経ではなく、正確には「歯髄」といいますが、これを除去する治療法は、確かに痛みを取る方法としては有効です。 しかし、抜歯に大きく近づく処置でもあります。

 

我々保険医は、病名という縛りの中で処置が限定されます。つまり、いったん病名をつけると、その病名で認められた処置以外は、請求できなくなります。 一般に、むし歯に対する処置にはC(dental caries=むし歯)という病名(進行度によって1〜4とあります)で行いますが、いわゆる「神経を取る」という処置はPul(歯髄炎)という病名でなければ認められません。 むし歯がひどくて神経を取るとは、よく皆さんがお聞きになることでしょうが、実は別の病名がつくのです。さらに、そこから悪化して根の周りに炎症がおきるとまたもや違う病名になります。

 

むし歯を放置してひどくなってくると、それはむし歯を原発とした別の病気に発展していくのです。

 

いわゆるむし歯治療とは、神経をいじらずに終えることができるところまで。その先は、別の病気の治療というふうに私は考えております。


Last-modified: 2007-03-12 (月) 00:50:40 (3790d)